はじめに
はじめまして! テクノロジー戦略室先端技術グループの永安と申します。普段はAI/MLに関してプロダクトへの適用を目指した研究開発をしています。レバレジーズって研究していたの?と思ったそこのあなた、鋭いですね。先端技術グループは2025年4月に発足したばかりのチームです! Gemini2.5より年下でGPT 4.1よりは年上ですね。
先端技術グループは、AI/MLの最新技術をキャッチアップまたは新規技術を開発し、それを実際のプロダクトに落とし込んで実用化していくことを目標にしています。その一環として、先日開催された人工知能学会全国大会(JSAI2025)に参加しました。大学企業を問わず様々な研究発表を聞くだけでなく、研究者や技術者と交流することができ、自分の研究活動にとって大きな刺激となりました。 本記事ではそんな人工知能学会の様子や気になった発表について紹介します。
JSAI2025とは
JSAI2025は、JSAIが主催する、日本最大級のAIに関する学術イベントです。企業でAI開発や研究を行う技術者の参加も多く、企業所属の研究者にとって貴重な情報交換の機会となっています。今年は第39回で、前回の約3800名からさらに参加者が増加し4900人超となっていました。多くのセッションがあり、講演やポスター発表から国内研究者の研究を知ることができました。また、企業ブースの出展もあり、企業所属の研究者、技術者から各社の取り組みを直接質問することができました。2日目には学会が企画した懇親会があり、それ以外にも連日有志企画の大小様々な交流会がありました。自分は2日目の公式懇親会に参加できませんでしたが、翌日の非公式懇親会に参加したところ、普段関わらない業種でAIの研究、活用をしている研究者、エンジニアと知り合うことができ非常に有意義でした。
発表のトレンド、技術動向
近年のトレンドを反映し、LLMに関する研究発表が最も多数を占めていました。特に、LLMを個別事例へ利用することが増えたため、評価、アノテーションに関する研究が多かったです。また、LLMエージェントに関する研究も増えており、リアルユースでのワークフローの組み方の工夫がよく議論されていました。原理的に内部構造を解釈しづらいLLMの重要度がより増したことを背景に、アラインメント、解釈可能性に関する研究も多かったです。解釈性がメインのセッションが複数あり、この分野への関心が高まっていることを感じました。レバレジーズに関係する人材領域でのAI研究についても企業を中心に発表されていました。
イチオシの発表
双方向推薦システムにおけるコントラスト効果の応用
- ある対象を別の対象と比較して提示することで相対的な価値や魅力が変化する心理的効果であるコントラスト効果をマッチング領域の推薦システムに応用した研究です。ユーザーの行動履歴を元にユーザーの行動を促す魅力的な推薦と現実的にマッチングする推薦のバランスを取ることが特徴です。双方向推薦において重要なユーザーから見た魅力と現実的なマッチングのバランスを行動履歴という時系列情報から決定する手法を述べていた点が非常に面白かったです。レバレジーズの人材推薦でも求職者の行動変化による双方向推薦のバランス調整は活用できると感じました。
エンジニアの職歴データによるスキルネットワーク分析
- エンジニアが持つスキル同士の関係をネットワーク分析した研究です。職歴のデータセットからエンジニアの集合とスキルの集合で二部グラフを作り、ネットワーク構造の傾向を見ています。レバレジーズの中でもエンジニアの転職支援は重要で、エンジニアスキルのネットワーク構造には関心がありました。発表者はネットワーク分析の専門家で分析手法が上手く参考になりました。
LLMエージェントによるエルファロル・バー問題の解析
- ゲーム理論におけるエルファロル・バー問題についてAIエージェントでシミュレーションを行った研究です。元々のエルファロル・バー問題は、空いている時にバー行くと良いが混んでる時には行きたくないという状況における集団の意思決定と戦略に関する問題でした。この研究では二次元上で互いの接近時に情報を伝達できる複数のAIエージェントでこの問題をシミュレーションしていました。この研究の面白い点として、LLMのプロンプトにタスクを明記せず、バー内の混雑具合に応じた快、不快のフィードバックのみから自律的にバーに入る、出るという行動をとっていたことがあります。さらに、エージェント同士の会話により、バー内で不快な状態でエージェント同士が密集して動かなくなるという現象が観察されたのも面白かったです。コントロールした環境で面白い現象を観察した研究なので、今後エージェントに関する一般的な知見が得られることも期待できるように感じました。
深層基盤モデルの数理
- ディープラーニングに関する近年の理論研究についてまとめたチュートリアルです。機械学習理論の国内トップ研究者による講演で情報量の多さに圧倒されました。資料は一見の価値ありです。CoTの理論に関しては全く追えていなかったので新鮮に感じました。また、テスト時スケーリングの理論は今後LLMを作る側だけでなく、レバレジーズのような使う側にとっても精度向上に利用できそうで面白かったです。豊富な内容から優秀な研究者のキャッチアップの多さを感じることができ、自分自身のモチベーションにもつながるチュートリアルでした。
最後に
今回は聴講のみの参加でしたが、国内のAI研究を知ることができ、また研究者や他企業の技術者と交流することで有意義な知見が得られました。次回はレバレジーズからも発表ができるように取り組んでいきたいですね。
先端技術グループではAIに関する技術開発を行うメンバーを募集しています。ビジネスに関わる領域で研究しつつも裁量を大きく持てるところが魅力だと思います。少しでも興味を持っていただけた方はこちらからご応募いただけると嬉しいです。