Atomic Designを導入して開発コストの削減とデザインの統一を実現した話。

はじめに

こんにちは。2021年新卒の田中です。現在私は、フリーター・既卒・第二新卒など、20代を対象とした就職・転職支援サービス「ハタラクティブ」のシステム開発やユーザー体験の改善に携わっています。

ハタラクティブでは、Laravel + jQueryだったフロントエンド環境をReact/TypeScript + Next.jsにリプレイスしました。その際、コンポーネントシステムとしてAtomic Designを採用し、入社1年目ながら選定から設計、導入プロジェクトの管理、運用ルールの構築を任せていただきました。

この記事では、ハタラクティブでどのような課題を抱えていてAtomic Designを採用したのか、導入を進めるにあたってどのような問題が発生し、どう解決したのか、メリットを含めてご紹介します。

課題は開発コストの削減とデザインの統一

ハタラクティブではフロントエンドをReact/Next.jsで開発していますが、当初はコンポーネント管理に関するルールが決まっていない状態でした。そのため、同じ記述が複数箇所にあったり、同じUIパーツが共通化されていなかったり、無駄な記述や重複が多く、開発コストが余計に増えたり保守性が下がる問題や、修正作業が属人化する問題を抱えていました。

当時は、スタイルガイドが機能していなかったため、チーム内でデザインについての共通認識を取れず、作成したUIパーツを使い回す体制も整っていませんでした。その結果、同じUIでもページによってデザインが異なっている状態が発生していました。

以上のことから、ハタラクティブオウンドメディアチームでは開発コストを小さく抑え、デザインが統一された状態を作る課題があったため、導入事例やドキュメントが多いAtomic Designを採用し、コンポーネントシステムを構築することを提案しました。

導入に際しての懸念

チーム内の知見が少なかった

当時は本格的にAtomic Designを使った開発経験があるメンバーがいませんでした。どのように導入すればいいかのイメージがすぐに湧かず、チーム内でコンポーネント化の共通認識が持てない状況でした。

そのため、私が主導して他サービスのAtomic Design導入事例の記事や社内の他チームへのヒアリングを通じて、Atomic Designに関する知見を集めました。自分で試しにテンプレートファイルのAtomic Design化を実装し、そこで得られた知見に基づき、チームで導入の方針や定義、懸念点の解消方法を明確にするための話し合いの場を複数回設けました。

導入コストが大きかった

コンポーネント化を進めることで今までのStyleの記述方法を大きく変える必要があるなど、ハタラクティブへのAtomic Design導入コストの大きさの懸念もありました。

導入コストに関しては、既存コードの整理や将来的な開発コストの削減を目指す方針で認識を合わせ、通常施策とは別のリファクタリングタスクを通じて長期的に進めていきました。Styleに関してはNext.jsでサポートされているCSS Modulesを採用しました。CSS ModulesはCSSをmoduleに分け、JSファイルでimportすることでスタイルを適用する手法です。コンポーネントごとにmoduleファイルを分けることでスタイルをコンポーネントに閉じることができ、class名の干渉を考慮する必要なく記述することができます。

/* Example.module.scss */

.title {
  font-size: 1.6rem;
  color: #222;
}
.box {
  padding: 8px 16px;
  background: #eee;
}
// Example.tsx

import styles from "./Example.module.scss"

const Example: React.FC = () => {
  return (
    <>
    <h2 className={styles.title}>タイトル</h2>
    <div className={styles.box}>
      {/* 中にコンテンツ */}
    </div>
    </>
  )
}

export default Sample

CSS Modulesの導入から記述方法の共有を主導し、デザイナーがコンポーネント単位の書き換えを徐々に進めていくやり方を取りました。

方針とルールを決めて、長期的に導入を進めていく

基本を理解した上でコンポーネント分けルールを作る

Atomic Designの基本を理解し、ハタラクティブに導入する上での解釈をすり合わせ、コンポーネント分けルールを作成しました。ルールの一部を紹介します。

例えば、MoleculesはAtomsやOrganismsと異なり定義が難しかったため、再利用性を判断軸に置き、分類に迷った場合は一旦Organismsにする運用方針に決めました。 データの取得や保持に関しては、統一性と再利用性を高める目的で、API通信に関する機能や各ページで異なるデータはPagesのレイヤーに、固有のデータはOrganismsに持つようにしました。

準備→試験導入→実装の順にスケジューリング

方針とルールが固まったら、どういったスケジュールで進めるのかを決めました。実際のプロジェクトは準備編、試験導入編、実装編の3つのフェーズに分けて進めました。

準備編では「何をやるのか」「どこまでやるのか」が決まっている状態をゴールに据え、既存デザインパターンの洗い出しとコンポーネント設計を行いました。デザイナーと一緒に既存パーツのバリエーションを精査しページ全体のトンマナやデザインを統一しながら、コンポーネント分けルールに沿って分類と設計を進めました。

試験導入編は「チーム全員がやることを理解し、導入方針に納得している状態」をゴールとし、本格的な実装の前に工数を取って全員がAtomic Designを試す週を設けました。複数の視点から見えてくる問題や疑問を事前に解消し、スムーズに実装を進めることを目的としていました。

実装編は「通常施策への影響を小さく抑えながら導入を完了する」ことがゴールで、Atoms→Molecules→Organismsと小さいパーツから順に実装していきました。 スタイルガイドが機能していない問題に対しては、storybookの導入を決めました。 storybook.js.org storybookは、UIコンポーネントの管理やアドオンを使ったテストなどができるツールで、コンポーネント化と並行してスタイルガイド作成を同時に進めることにしました。

こうして約半年にわたるスケジュールを作成し、導入プロジェクトを進めていきました。

実装時にぶつかった問題

準備を重ねて実装編に入りましたが、いくつか問題があがってきました。

Atoms, Molecules, Organismsだけでの管理ができないケースがある

Atoms、 Molecules、 Organismsだけでの管理は、ディレクトリを増やさずに済むのでシンプルさを維持できたり、世の中にリファレンスが多いメリットがあります。しかし、エントリーフォームなど複雑なUIに対しては「Atomsは最小単位で他のコンポーネントを含まない、MoleculesはAtomsを1つ以上含む」などのルールが適用できず、例外が発生してしまうのが避けられない状況でした。

それに対し、ハタラクティブ独自のディレクトリルールを追加するのは、慎重に考える必要がある一方で、ハタラクティブのデザインに合わせて管理しやすい形を実現できるメリットがあります。

そのため、既存のAtomic Designの形を大きく変えないように注意しながら独自のディレクトリルールを作成しました。具体的には、Layouts, Transitions, PageContentsディレクトリなどを追加し、それぞれレイアウトを共通化するコンポーネント、カルーセルやアコーディオンなどのインタラクションを共通化するコンポーネント、ページ全体のStyleやStateに関するコンポーネントを管理するようにしました。

コンポーネントに関する作業が属人化している

導入プロジェクトが始まってしばらく経ったタイミングで作業の属人化が問題となり、2つの問題に分割して対処しました。

1つ目は基準が明確化されていないことです。準備編で作成したルールを見直し、Atomic Designやハタラクティブのデザインパターンに関する知識が少ない人でも理解できるように、コンポーネントの各ディレクトリの役割や実際に分ける際のフローをドキュメント化し共有しました。

2つ目は、慣れの問題です。プロジェクトの進捗を優先していたことで特定の人にAtomic Designタスクが集まっている状態になっていました。限られた人しか出来なければ導入後の維持が困難になります。そのため、なるべく全員が実装タスクを担当するようにし、私がレビューに入るようにしました。

導入した結果

デザインの統一、管理が容易に

導入の過程でデザインを精査したことでデザインの統一が実現し、共通コンポーネントを使うことで微妙に違うデザインが生まれることが防げるようになりました。

storybookを使った管理をすることでデザイナー・エンジニア間のUIパーツの認識合わせや、どんなパーツがあるかの把握が容易になりました。

開発速度の向上と属人化の解消

コンポーネントが共通化されたことにより、変更を加える際の対応箇所が1箇所、ないしは少なくなって開発速度が向上しました。

それまでは修正漏れを避けるために担当者が固定されて作業が属人化していましたが、ファイルが統一されたことで誰でも修正を担当できるようになりました。

大規模なデザイン変更や新規コンテンツ実装にも力を発揮

Atomic Designの導入がほとんど終わってきた段階で、サービスのブランドコンセプト見直しに伴う大規模なデザイン変更がありました。その際、コンポーネント化によって新デザインの反映がスムーズになったり、ルールが作成されていたことで新規UI追加の際も深く悩むことなく実装ができました。

新規コンテンツとして求人検索ページの実装タスクでも力を発揮しました。求人検索ページはボタンなどの既存パーツを使いつつ、検索パネルなど新規のUIも多いコンテンツでしたが、storybookやコンポーネントルールにより作業効率を高めることができたことで2週間という短い時間での実装を可能にしました。

終わりに

Atomic Designの採用によって、開発コストの削減とデザインの統一という課題を解決し、オウンドメディアとして今後の成長を加速させていく基盤を作ることができました。しかし、Atomic Designを導入さえすれば解決できるというものではありません。職種を超えて課題について議論し、常により良い方法がないかを模索できるチームがあったからこそ実現できたと思っています。

配属から2ヶ月足らず、Reactに対する経験も浅い状態で、今回のAtomic Design採用提案から導入まで担当させていただきました。このように、レバレジーズには年次や経験を問わず、主体的に取り組める環境が整っています。

レバレジーズは「主体的に仕事に取り組みたい」「エンジニアの技術を活かしてサービスの課題を解決したい」と思っている方が活躍できる環境です。

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